父親とか

ジェーン・スー「生きるとか死ぬとか父親とか」読了。

おもしろかった。

生きるとか死ぬとか父親とか

生きるとか死ぬとか父親とか

 

スーさんと父親との交流と現在過去未来。交流と言うには軽すぎるかもしれないが。

まず何よりスーさんのお父さんがとても魅力的。お洒落で洒脱で飄々としていて誰からも(特に女性から)好かれるナイスミドル。

ただし端から覗き見る分には。

身内にいると楽しいんだけど大変な人なんだろうなと思う。特に娘の立場でこの父親を許せるの?と思ってしまう。

スーさんは許した。というか死なば諸共というような心持ちでこの本を書いている気がする。

なんかもう覚悟が違う。

スーさんが松之丞さんとの対談で「やっかいな男が好き」と発言したルーツがここにある。

 

これまでの著作では、ざっくばらんに明け透けに女友達との会話を楽しむような文章だったけれど、

今回はどこか遠慮がちで、常に冷静でいなければと考えてるような文章で、それがそのままスーさんとお父さんの関係性を表しているように感じた。

 

前半はスーさんが父親との交流を通して、父の半生、親類一同・家族への理解を深めていく。

後半は父と母。そして娘。この本の核心部分であろう三人の過去が紐解かれていく。

その構成も巧み。

 

いつも、なぜスーさんは種々雑多な相談に、あんなに的確にアドバイスが出来るんだろうと感心していたが、

この本を読んでスーさんの半生を知れば、そりゃそうだと納得する。

普通の人では経験できない修羅場をくぐり抜けている。

父と母。娘と父。男と女。向田邦子の世界。

太田さんがこの本を絶賛していたのも当然だ。

 

最後に、スーさんがさすがというかしたたかというか抜け目ないのが、この本の中にパートナーの方がほぼ登場していないところ。

まったく出てこないわけではなくチラッと顔を出す。言及する。気になる。

いつの日かパートナーと対峙する本も出版されることを期待せざるを得ない。

 

スーさんは弱さをさらけ出せる強い人。

スーさんの100分の1でも仕事に真摯に取り組むことが出来ればと切に思う。

もっと生活も踊らせねば。