AX
伊坂幸太郎「AX」を読みました。
おもしろかったです。
恐妻家の殺し屋の話。
家族の話。
伊坂さんが描く家族はどうしてこんなにあたたかいんだろう。
冷静沈着な殺し屋の唯一恐れる存在が妻。
そんな夫婦のやりとりがこれでもかと語られる。
夫の妻に対する涙ぐましい努力(妻への愛ゆえの)が淡々とした筆致で表現されていて、悲哀とおかしみを余計に誘う。
ただ、それだけでは終わらない。
あ~このままこんな生活が続いていくのも幸せなんだろうな。
コミカルでおもしろいな~なんて思っていたら、後半の展開に見事にやられた。
家族愛。一言ではとても表すことは出来ないけれど家族愛、なんだと思う。
なによりすごいのは、何かとんでもないことが起こっているわけではないところ。
いや起きてはいるのだけれど、殺し屋という仕事から想像するとんでもないことは起きていないわけで。
それなのにこんなに引き込まれるのは、構成やら何やらがとんでもなく秀逸なのだろう。
伊坂さんの手のひらの上で転がされているような気持ちになった。
もちろん良い意味で。
殺し屋シリーズは3作目だそうで、前2作読んでなくてもこれだけおもしろいなら、読んでいたらもっともっと楽しかったんだろうなと想像に難くない。
読んでる人が少しうらやましいけれど、読むかどうかはまた別の話。
映像化されるだろうなぁ。