僕と顔の本

久保能町annラブストーリー没ネタ。


Facebookなんて二度とやらない」


登録から2時間、退会のボタンを押すアミ。
でもその前にもう一度だけ…。


「お前って自分のこと『僕』って言うんだな」


これは高校生の時に大好きだったクラスメイトの男子に言われた言葉。
放課後の誰もいない教室。
初めて出来たなんでも話せる友達と喋っている時だった。
教室に忘れ物を取りにきた彼が去り際にふと口にした。


「違う、違う!私ふだん別に自分のこと僕って呼んでないし、ほら、これはその、なんていうの、その場のノリ、って言うか…」


なんて言い訳が出来るわけもなく、ただ顔を赤くしてうつむいていた。


彼の言葉には、悪意も蔑みも見下した感情もなかった。
ただ純粋に疑問に思ったから聞いただけ。
いつもそう。素直でまっすぐで。自然と周りに人が集まる。太陽みたいに。

そのあと、この事がクラスに広まることもなく、私がバカにされることもなく。
また彼と接することもほとんどなく卒業。
もう一生会うこともないんだろうな、と思ってた。
それがこんな簡単に見つかるなんて。


でもさぁ、自分の子どもの写真をアイコンにすることないじゃん。
そんな幸せをこれ見よがしに他人にひけらかすことないのに。


ただ、それも素直に自分の喜びを表現しただけなんだろうな。
あの日の放課後、私に話しかけてきた時みたいに。純粋に。


けど、やっぱり悲しいよ。


私もいつか結婚できるのかな。

わからない。
わからないけどまずは、卑屈にならず素直に彼を祝福することからはじめよう。


結婚おめでとう。

全然ラブストーリーじゃなかった。
でもちょこっとだけ気に入ってたりする。
おはずかしい話ですが。