マチネ

「マチネの終わりに」を読みました。

面白かったです。

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

以下ネタバレ含む感想を。

はてなの文章隠す方法わからなくなったのでそのまま。

未読の人、映画を楽しみにしてる人は見ない方がいいかも。

 

 

 

 

 

あらすじは天才音楽家と辣腕ジャーナリストの運命の恋と二人を取り巻くあれやこれや。

平野さんの本を読むのは初めてで、もっと難解なイメージを持っていたけど、思っていたより読みやすかった。

もちろん読めない漢字はたくさんありましたが。

そのもったいつけたような、まどろっこしくもきらびやかな修飾表現がインテリの二人を表すのにぴったりだった。

自分とは縁遠い、頭のいい人たちはきっとこんなことを考えながら生きているんだろうなと素直に思えた。

 

物語の中で二人は何度もすれ違います。

事前に「後半はアンジャッシュだよ」と聞いていたので、そのすれ違いっぷりにちょっと笑ってしまった。

見ても聴いてもいないので憶測ですが、たぶん往年のドラマ「君の名は」はこんな感じなんでしょうね。

すれ違いに次ぐすれ違い。すれ違いの連続。

それを通信技術の発達した現代でやるのは大変だったと思う。

まず距離を隔てる。

舞台は日本、フランス、イラクアメリカと世界中。おいそれと会いにいけない。

次にそれぞれが置かれている立場での心境の変化。

楽家として壁にぶち当たったり、イラクでテロに巻き込まれそうになったり。お互いに相手をおもんばかる思慮深さ。キャリアや年齢によるところも大きいのかもしれない。

そして物語のキーマンとなるマネージャー、フィアンセなど第三者の存在。

タイミングよく、いや悪く恩師が急病になったり、イラクの友人が亡命してきたり。

それらが絡まり合って、二人がすれ違っていく。

今の世の中じゃ愛する二人がすれ違い続けるためにはこれだけの設定が必要で、きっとミステリーのトリックを考えるように計算して書いたんだと思う。

アンジャッシュもそんな風に緻密にコントを作っているのかもしれない。

そのトリックの種明かし部分はちょっと雑だったか。でも良心の呵責に耐えかねて罪を吐露するのはリアルだと思った。

 

あとヒロインの洋子さんは父が旧ユーゴ出身の映画監督で母は長崎の被爆経験者、自分は戦地を取材するジャーナリスト、夫はリーマン・ショックの原因を作った経済学者って、いろいろ乗っかりすぎだと思う。

 

二人は紆余曲折を経て感動の再会を果たす。

そこで物語は終わるんだけど、まあスマートでオシャレ。

 

この小説が高評価を得ているということは、多くの人がこんな劇的な出会いを求めているということか、はたまた過去を振り返り「あの時ああしていれば…」なんて考えているのか。

いずれにせよ、好きな人がいるのに別の相手と結婚して子供まで作っておいて、やっぱりあの人が忘れられない!なんて恋愛が、

大人の恋愛だというのなら、大人には一生なれないと思った。

 

映画のキャストは福山雅治石田ゆり子で申し分ない。

でも僕の脳内キャストは葉加瀬太郎安藤優子、もしくは阿部知代だったので、それを超えられるかどうか。

 

 

これだけ感想が出てくるのだから、きっといい小説。